こだわりから生まれる絶妙のバランス

細さの他にもこだわりは随所に見受けられる。例えば「木目」も東中村さんがこだわっている要素のひとつだ。正面には木目のない「柾目」を使い、側面に木目のある「板目」を使う。「些細なことかもしれないけど、そういう細かなディティールがパッと見た時の美しさにつながるのだと思います」

鹿児島のシンボルである桜島は見る角度によって様々な表情を見せるが、wood scaleの家具も桜島同様、見る角度によって異なる美しさを見せる。

工房にはピットチェアの試作品がいくつか置かれており、一見同じに見えるが、座ってみると微妙に座り心地が違うことに気付く。

「ちょっとした角度やバランスで座り心地は変わります。図面では分からないので、実際に試作品をつくって検証し、またやり直す。その繰り返しでようやく今のカタチに辿り着きました」

日本人の体型に合った設計

「影響を受けた家具作家はハンス・J・ウェグナーです。とても有機的なフォルムを持つ家具の図面を手描きで描いていて、やっぱりウェグナーは凄いと思いますね。尊敬していますし、家具をつくる際は意識しています」

多くの家具作家に影響を与え続けているウェグナーは、東中村さんにとってもやはり特別な存在のようだ。模作したウェグナーのフォールディング・チェアは、自邸の玄関土間に飾っている。

「北欧家具は名作が多いのですが、日本人にはサイズがちょっと大きいんですよね。wood scaleでは、日本人の体型に合ったサイズで設計しています」